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テンションがドーンと下がる瞬間

都内の保育園での美術の時間。

 

サザエの貝殻を持っていってみた。

みんな興味津々。

「波の音がする~!」「なんかついてるーー!」

 

虫眼鏡を出してきて

「よおおおおーーーく見てみよう」と言うと

みんな大興奮。

でも「よく見えないよ」って・・・あの、目に近すぎじゃないですか?(笑)

初めてサザエを見た子もいて、めちゃめちゃ盛り上がっていました。

が、しかし・・・

 

「じゃあ、面白いと思ったところだけでいいから

よおおおーー―く、詳しく描いてみよう」と言ったその瞬間から

テンションがドーーーンと下がるのがわかりました。

 

「僕下手だから描けないよ」と言って、私の描いたものを描き写すとか

ササっと書いて「終わりにする」子が続出。

一生懸命サザエを描いてくれた子もいたけれど

楽しそうには見えなかった・・・

 

・・・いつもの皆さんとこんなにも違うのかと呆然とした。

 

「●●●を描こう」と言われた瞬間から生じる、苦手意識。 

みんなの「楽しい!」「こうしたい!」の表出がいつもと全然違う。

保育士の先生いわく

「普段、動物園を描こう、とか言ってもそんな感じです」って。

描く、創るに対する苦手意識は根深いなあ。

 

うまくサザエを描いてほしかったわけじゃない。

どんなところが面白くて、

それをどんな風に見ているのかを描く提案をしたつもりだった。

 

いちいち言わなくても、いつもの作品にそれは表れていた。

「それを描いて」と投げかけられたら、む~ん。。。となってしまう。

そりゃそーーだ。

 

何かがうまく描けると、なぜか大人は喜ぶけれど

この人たちは、それよりも、もっと、なんというか…

心が動くのを丸っと表出したようなものを創り出す。

表現って、何かの様子や形をそれらしく描くことじゃなくて

自分がどう感じたかに偏っていていいと思う。

 

・・・肩を落として後片付けをしていると

一人の女の子が寝転がりながら、貝殻で遊び始めた。

その時生まれたのがこちら。

ああ、これが ”自分の中から生まれた形" だよね!

 

自分の中でまだモヤモヤしていて、うまく言葉にできないけれど、

この日は子どもたちから多くを学ばせてもらった。

ということで、2週間後リベンジです。

 

再度サザエを皆さんの前に出す。

やっぱりみんな大興奮。

サザエの貝殻をマイクにしたり(声が響く!)

匂いをかいでみたり、恐る恐る指をつっこんでみたり。

「なんで角があるのかな?」なんて話しながら

 

粘土を出してくっつけていくと

「やりたいやりたい!」って盛り上がる。

そして

隣が何をしているかなんて全く見もせずに

自分の直感に従って、どこをどうするかに集中しはじめる!

 

ひたすらビーズをつけていく、

サザエを全部粘土で包み込んじゃう

どんどん増築されて置けない状態

平面的だったり、立体的だったり

もう、人それぞれ。

 

作品を見てみると、何を面白いと思うかも

ひとそれぞれなんだなあ、ってわかる。

自分がどうしたいか、に集中する真剣なまなざしと

誇らしげで満足そうな表情。

彼らが創り出したものは、ナニモノでもなくて

でもなんか迫力あるぞ!

 

前回と今回、何が違うのかをよーー―く考えてみたい。